どのくらい騒音が漏れるかの指標・Dr値について

集合住宅におけるDr値

次に、マンションなど集合住宅について騒音問題を考えます。
まず、日本建築学会による、集合住宅に対する遮音性能基準を紹介します。以下のようになっています。
 
D-55 →特級(特別):遮音性能上非常に優れている:特別に遮音性能が要求される使用状態の場合に適用する
D-50 →1級(標準):遮音性能上好ましい:通常の使用状態で使用者からの苦情がほとんど出ず遮音性能上の支障が生じない
D-45 →2級(許容):遮音性能上満足しうる:使用者からの苦情や遮音性能上の支障が生ずることもあるがほぼ満足しうる
D-40 →3級(最低限):遮音性能上最低限必要である:使用者からの苦情が出る可能性が高い
 
以上ですが、最下ランクのD-40は「学会基準外仕様」と位置づけられており、「苦情が出る可能性が高い」とされている点からも、
かなり要注意の物件と言えます。
 
さてDr値という数値を通じて遮蔽物の遮音性を見てきましたが、一般に、
「重い=比重が高い物体は音をよく遮断し、軽い=比重が低い物体はあまり音を遮断しない」という法則があります。
また、壁の厚さも当然影響します。「厚ければ厚いほど音をよく遮断する」わけです。
 
これを確かめたうえで、マンションやアパートの壁を考えます。
マンションの工法は、大きく分けて鉄筋コンクリート工法(RC造)と鉄骨造(S造)の二通りがあります。
このうち、鉄筋コンクリートは騒音の問題やトラブルはあまり起きません。というのは、鉄にせよコンクリートにせよ、かなり比重が高い素材だからです。
より問題が起こりやすいのは、鉄骨造のマンションやアパートです。
これらのマンションやアパートでは、壁が本来のコンクリートではなく、軽量気泡コンクリート(ALC, autoclaved lightweight aerated concrete)という、
文字通り気泡をたくさん含む多孔質で、重量が軽い素材で作られていることが多いのです。
そのため、鉄筋造のマンションやアパートでは壁の遮音性が低めになり、騒音トラブルも起こりがちになります。
アパートの場合はさらに、木造のものも多く、強くたたけば穴が開くほど壁が薄いこともあるため、遮音等級D-40を下回るものさえあります。
あまりにも遮音性能が低い場合には、防音工事よりも住み替えを考えた方が良いこともあります。
アパートの場合は、部屋に手を加えることがそもそも賃貸規約に違反してしまうことがありますから、確認が必要です。
 
マンションなど集合住宅については、やはり入居前のマンション探しの段階で、遮音性能を確認することが大事です。
施工業者、または不動産業者に情報開示を求めればわかるはずですので、かならず確かめましょう。
Dr値のデータが直接得られない場合でも、鉄筋コンクリート工法なら、壁の厚さから、
           壁厚120mm → D-45程度
           壁厚150mm → D-50程度
           壁厚200mm → D-55程度
といった見当が得られます。
鉄骨造の場合は壁の厚さでは判断しにくいので、住宅性能表示の等級が参考になります。
等級4であれば、かなり良好な遮音性があります。等級1や2だと、ちょっと問題があるかもしれません。
ただ、これらはいずれも目安であって、実際には周辺環境などさまざまな条件が関係してきます。
やはりいちばん確実なのは、現物を内覧して、直接自分の耳で遮音性をチェックすることでしょう。