どのくらい騒音が漏れるかの指標・Dr値について

どのくらい騒音が漏れるかの指標・Dr値について

壁や窓の遮音性についてのお話になります。
 
まず、壁や窓越しに音が聞こえるとはどういうことでしょうか。
「音」というのは空気を通して振動が伝わることです。
これが壁や窓などの固体にぶつかり、その固体を振動させ、その振動がさらに壁や窓の反対側の空気を振動させる、ということ。
これが「音が壁を越える」ということです。
 
経験上わかるでしょうが、遮蔽物なしに単に距離を置いて離れるよりも、壁や窓といった遮蔽物の方が大きく音を減衰させます。
遮蔽物がどれほど大きく音を減衰させるかをあらわす値が「Dr値」です。言い換えれば「どのくらい騒音が漏れるかの指標」ということです。
 
Dr値は、音源側からの音=入射音の音圧(dB)に対し、遮蔽物の反対側に響く音=透過音で、どれくらい大きく音圧(dB)が減っているかで決まる値です。
たとえば、入射音が100dBで、透過音が60dBであったならば、Dr値は40ということになります。
言い換えれば、Dr値は「壁や窓の、騒音を引き算する性能」を意味します。遮音性ということです。
上の例では、これを「D-40」と表記します。そして、こうして表記される遮音性能のランクは、「遮音等級」と呼ばれます。
 
実際には、遮蔽物のDr値は、日本建築学会が定める基準にもとづいて、もう少し詳しく検証した上で認定されます。
遮蔽物がどれほど音を遮断するかは、音の高さ、つまり周波数によっても変わってきます。
音が高い=周波数が高いほど遮断されやすく、音が低い=周波数が低いほど遮断されにくくなります。
壁越しに聞こえる隣人の声が、本来のその人の声よりも少しくぐもった感じに聞こえることは、経験上わかると思います。
これはつまり、高音域がカットされていることを意味しています。
いろいろな音の高さで有効な遮音等級を認定するために、日本建築学会の基準では、125ヘルツ、250ヘルツ、500ヘルツ、1000ヘルツ、2000ヘルツ、
4000ヘルツの6つの中心周波数帯域について透過音の減衰量(透過損失)の基準を定めています。
そのすべての周波数帯域で基準を上回る減衰量を示したとき、その最大の基準曲線につけられた数値によって遮音等級を表します。
遮音等級の数値は、中心周波数帯域500ヘルツを基準としています。
たとえば、500ヘルツの音の減衰量(透過損失)がマイナス15デシベルなら「D-15」、マイナス50デシベルなら「D-50」と表記されます。
 
どのくらい音が漏れない? -遮音等級について
遮音等級の数値が高いほど、音をカットする性能が高いことはわかりますが、では、どの数値でどの程度かというのは、
やはりちょっと直感的にはわかりにくいでしょう。
これも具体的な目安がありますので、一例を挙げておきます。
遮音等級 ピアノ・ステレオなどの大きい音 TV、会話などの一般的な音
D-65 通常は聞こえない 聞こえない
D-60 ほとんど聞こえない 聞こえない
D-55 かすかに聞こえる 通常は聞こえない
D-50 小さく聞こえる ほとんど聞こえない
D-45 かなり聞こえる かすかに聞こえる
D-40 曲がはっきりわかる 小さく聞こえる
D-35 よく聞こえる かなり聞こえる
D-30 たいへんよく聞こえる 話の内容がわかる
D-25 うるさい はっきり内容がわかる
D-20 かなりうるさい よく聞こえる
D-15 たいへんうるさい つつぬけ状態
備考 音源から1mで90dB程度の音 音源から1mで75dB程度の音
 
こうして見ますと、D-15ではほとんど「江戸時代の長屋」レベルであることがわかります。
反対に、D-65になると、90デシベルのピアノの音が、マイナス65デシベルの25デシベルまで小さくなるのですから、
前掲の騒音の大きさ目安表で見ると「郊外の夜間、ささやき声」のレベルです。かなり大きな遮音性であることがわかります。
参考までに、屋内にピアノを置くための防音室を設ける場合、その遮音等級はD-55ほどが標準となります。
ふつうの話し声くらいの音が透過してきますが、防音室の外にはさらに家屋の壁があるのですから、近隣に対する遮音性としてはそれで十分なのです。
ドラムスや金管楽器ともなりますと、D-65くらいが標準になってきます。

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